ロジカルシンキング入門編 MECEを理解しよう

ロジカルシンキング

MECEという言葉。
過去にロジカルシンキングを学ぼうとチャレンジしたことのある方は目にしたことがあるはずです。
このMECEという考え方はロジカルシンキングを学ぶ上でとても重要なものです。
こちらの記事(倫理の最小構造を理解しよう)でも触れましたが、「論理の最小構造」「MECE」この二つの考え方が習得できれば、ピラミッドストラクチャーや、ロジックツリーといったツールも使うことができるようになります。

MECEで考えられるメリットは大きく2つ

・あらゆる可能性を網羅できる、可能性の見落としに気付ける
・多くのデータからパターンを発見できる、探したい真因にたどり着ける

MECEのメリットによって、解決できる悩み事の例

・その発想はなかった。と思われるような斬新で画期的なアイデアを考えてみたい
・今月の売り上げが下がってしまった。何が原因なのだろう

本記事では、MECEとは何か、具体的にどのように役立つものなのか、どのように習得できるものなのかを解説していきます。

MECEとは

表面的なことはちょっと調べてみればいくらでも出てくるので、ここでは簡単に「漏れなくダブりなく」の状態であるとします。
簡単にとは言いますが、MECE自体の持つ意味としてはそれが全てだと言えます。

よく出てくる例として、「人間という集合体」をMECEで考えると、例えば年代別で考えることができます。
10歳未満、10代、20代…80代、90歳以上
と言ったように分けることで、人間は誰しもどこかに所属しており、一度に2箇所には存在できない。このように切り分けるような考え方がMECEです。

そして重要なのは、「人間という集合体」の切り口は決して一つではない。ということです。
例えば、「男性/女性」「未婚者/既婚者」「身長別」「年収別」といったように切り口は無数にあります。同じ年齢別でも10代毎ではなく「20歳未満/20歳以上」こんな形でも切り分けれるのです。
(一部100%ダブりがないとは言えないものもありますが、100%に拘る必要はありません)

他では中々語られない特徴として、演繹法や帰納法といった推論の手法は、抽象と具体という縦軸の考え方であるのに対して、MECEは同じ抽象度の全体を対象とする横軸の考え方になります。
ピラミッドストラクチャーやロジックツリーは共に、この縦軸と横軸の考え方を応用して、目的別に使い分けているのです。
故に、ロジカルシンキングにおいて、演繹法,帰納法とMECEが、真っ先に重要な項目となるのです。

MECEがどのように役立つのか

MECEは横軸の考え方であるとお伝えしました。MECEの強みを活かすにはどうしても縦軸の抽象度の考え方を無視するわけにはいきません。そこに注意をしながらメリットについて掘り下げていきます。

あらゆる可能性を網羅できる、可能性の見落としに気付ける

例えば直面した問題の原因を考える時。
例えば何かの目標を達成するための手段を考える時。
こういった「可能性」について考える時、MECEに考えることができているかどうかで、可能性の見落としを減らすことができます
ポイントは、いきなり具体的な可能性を列挙すると漏れが発生しやすくなります。まずは抽象的な部分から考えると良いです。

具体例を2つ挙げます

身近な具体例

ある時、あなたの家のテレビがつかなくなりました。その原因を考えてみてください。

具体的に可能性を列挙する考え方
・コンセントは抜けてないよな?
・リモコンの電池が寿命尽きたかな?
・テレビ壊れたのかな?よし、叩いてみよう

抽象的かつMECEな考え方
「電力が届いていない/起動の信号が届いていない/電力も起動の信号も届いた上で画面がつかない」原因はこれらのどこか絶対にあるはずだ。
このように「テレビがつかない理由」を抽象的に考えることで、MECEに切り分けることが容易になります。その上で具体的な可能性を検討していくことで、可能性の見落としを防ぐことができます。
例えば、電力が届くための条件はなんだろう?「ブレーカー/電源タップ/ケーブル」これらは正常な状態だろうか。

ビジネスにおける具体例

あなたは飲食店を営んでいます。最近近場にライバル店がオープンしました。結果、あなたの店の利益は下がってしまいます。利益を上げるにはどうすれば良いか。考えてみてください。

具体的に可能性を列挙する考え方
・目玉商品を開発してお客の興味を引いてみよう
・ポイントや割引券を導入してリピーターを増やそう

抽象的かつMECEな考え方
「収入を増やす/支出を減らす」利益=収入ー支出、だから利益を上げるための方針はこの2つで全てだ。
このように、「利益を増やす手段」をまずは抽象的に考えることによって、客の奪い合いだけが解決策ではないことに気付けます。
いっそ安さを求めるファミリー層は諦めて、子供をターゲットにしたメニューを無くしてコスト削減をしてはどうか。

これらの具体例で挙げたように、目的に対して抽象的なレベルでMECEに切り分けることが漏れをなくすために重要なことです。

多くのデータからパターンを発見できる、探したい真因にたどり着ける

パターンとは傾向や相関のことです。
最近の若者は結婚願望を持つ人が減少している。とか、株と債権の価値は逆相関である。とか、現状のトレンドや流行を把握したり、AがどうなったらBはどうなる。といったものをパターンと呼んでいます。
多くのデータからパターンを発見する行為とは、多くのデータから共通点を見つける行為です。まさしく帰納法による推論になるわけですが、ここで重要なポイントはデータの切り分け方です。良い切り口には良い仮説が必要になります。
具体例を2つ挙げます。

身近な具体例
あなたはたまに起こる頭痛に悩まされています。何が原因か調べるために、頭痛がしたタイミングでその前後の事柄を詳しく記録してみました。

ストレスが原因ではないかという仮説を立てたら
「外的ストレス/内的ストレス」「顕在ストレス/潜在ストレス」といったように抽象的に切り分けて、外的ストレスを受けた時は全然頭痛はしてないけど、内的ストレスが高い時に集中して起こっている。ということがわかったらパターンを掴めたといっても良いでしょう。もちろんそこで終わるのではなく、具体的に掘り下げていきます
もし切り分けられたどこにも傾向がなかった場合、この仮説は一旦捨てて、別の仮説を考えることになります。

睡眠が原因ではないかという仮説を立てたら
「前日の睡眠時間別」「直近3日の睡眠時間の合計別」「仰向け/うつ伏せ/横向き」といったように同じく抽象的に切り分けて確認します。直近3日で平均睡眠時間が6時間を下回ってる時だけ頭痛が起こっていたら、そこに原因がありそうですね。

これは睡眠時間が足りてない日が続くと頭痛が起こる。という相関関係、パターンを導き出しています。
MECEで考えずに、なんとなく睡眠時間が大事なんだろう。とだけ考えていても確証はどうしても持てませんよね?MECEのパターン発見には、簡単な要因であればあるほど明らかにこの原因によるものだという納得感のあるパターンを取り出すことができるのです。

ビジネスにおける具体例

あなたはホテルの経営をしています。顧客からのクレームや要望を元に、顧客満足度を向上させようと考えています。その内容は以下になります
・料理が美味しくない
・エアコンの効きが悪い
・髪の毛が落ちていた
・朝食の対応時間短い
・受付で時間がかかりすぎ
・タバコの匂いが気になる

これらの改善を一つ一つ検討することも大切ではありますが、そもそも顧客はどのようなことを不満に思っているのか。という傾向を導くにはMECEで考える必要があります。
例えば、従業員の教育が不十分かもしれない。と考えた場合。要因を「人/設備/システム」と切り分けることで


・料理が美味しくない(調理方法が原因)
・髪の毛が落ちていた(清掃をちゃんとしてほしい)
・受付で時間がかかりすぎ(受付に慣れていないものがいる)
設備
・エアコンの効きが悪い
システム
・朝食の対応時間が短い
・タバコの匂いが気になる(禁煙にしてほしい)

単に従業員の教育が不十分だと考えて項目の数を数えるよりも、人が影響する要因が50%を占めており、従業員への教育強化を行うことでこの部分は100%改善が見込める。その次に影響が大きいのはシステムの不満である。というように、全体の割合をわかりやすく把握することができます。

このように一見複雑な要因の集まりも、グルーピングすることで、顧客が求めているニーズを傾向として把握することができます。
今回はサンプル数が少ないので、洞察が浅い部分で終わってしまいました。しかし、別の記事で帰納法の注意点でも書いたように、データは十分に揃ってこそ真価を発揮します。

良いMECEは抽象化のスキルと、良い仮説から生み出されます。
良い仮説を立てるためのノウハウは奥が深いので割愛しますが、普段から一次情報に触れておくことと、それらを抽象的に考えることが大切だと思われます。
それくらい抽象化のスキルはMECEに、ひいてはロジカルシンキングには大切なことなのです。

MECEの考え方の習得

ここまで読んでいただけたのであれば、MECEを習得するためには、その前段階のスキルを身につける必要があることに気付いたのではないでしょうか?
そう、抽象と具体化のスキルです。
まずはMECEを失敗するのがどんな時かを確認しましょう。

MECEで漏れが発生するのは、抽象と具体の階段を一段ずつ行き来できなかった時

「飲み物」をMECEに分類しようと思った時、抽象的な部分から考えることが必要だとお伝えしましたが、「お茶、コーラ、野菜ジュース、ビール、焼酎」と言うように数え始めると、数が多すぎて網羅することが困難になります。
まずは「ソフトドリンク/アルコールドリンク」に切り分けて、その上でソフトドリンクを「清涼飲料水/炭酸飲料/乳製品系/コーヒー/その他」といった感じで切り分ける。このようにフォルダ毎に分けていくように、抽象度の階段を一段ずつ昇り降りするように切り分けることで、その枠の中での分類の数を少なくすることができます。

MECEでダブりが発生してしまうのは抽象度を混ぜた時と、切り口を混ぜた時。

「清涼飲料水、炭酸飲料、乳製品系、ジンジャーエール、その他」
これは炭酸飲料とジンジャーエールがダブってますね。ジンジャーエールは炭酸飲料の具体的な要素の一つです。ここまであからさまなMECEの失敗は起きにくいですが、同じ抽象度の世界で切り分けないと、確実にダブるか、盛大に漏れます。(今回の例で言うと、ジンジャーエール以外の炭酸飲料が全て漏れます)

「男/女/成人」
これは抽象度的には人のプロフィールの一段下の階層と捉えることができますが、ダブっています。これは「男/女」「成人/未成人」と言う切り口が混じっております。
睡眠に関する仮説で考えると「仰向け/うつ伏せ/横向き/枕使用」といったように、一見睡眠の体勢に関係あるものを網羅してるようで、「枕使用/枕使用せず」と言う切り口が混じっています。慣れないうちはこのようなことがあるかもしれません。
これに関しては、切り分けた後に、切り分けたもの同士を組み合わせて成り立つか?と言うダブりチェックを行うと良いでしょう。

つまり、以下のことに気を付ければ大きく失敗することは免れることができます。
・抽象と具体の階段を一段ずつ上り下りする。
・抽象度の違うものを混ぜない。
・切り口の違うものを混ぜない。

まずは例で挙げたように、実態のあるもの(食べ物や生物等)をMECEに切り分ける訓練をしてみてください。可能性などの目に見えない概念をMECEで分けたりするのは最初は難しいですが、チャレンジしてみてください。
抽象度のスキルについては以下の記事を参考にしてみてください。
抽象と具体 ~法則の発見と活用編~
抽象と具体 ~目的と手段~

どんな場面で役立つのか、どういったことに気をつければ良いか、を説明してきました。残すは実践です。
MECEも実践をしなくては絶対に習得できない考え方です。
・何か問題の原因を考える時。
・問題解決のための手段を考える時。
・トレンドや流行を探りたい時。
・相関関係を確認したい時。
是非MECEで一度考える努力をしてみてください。
一番大切なことは、上記のどれについて考える時も、いきなり具体的でピンポイントなところから考え始めないことです。
まず物事の全体を認識して、一段ずつ階段を降りていくように考えることで、可能性を見落とさず、かなり高い確率でこれだと言う確信を持った結論にたどり着けることでしょう。

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