自分の考えを人に伝えるのが苦手な方。自分の発言に自身の無い方。
自信を持って相手に伝える。その上で自分の主張を納得させる。というのは、「話すスキル」や「表現のスキル」と言った類のものではありません。
自分の考えを掘り下げる。要点をまとめて整理する。こう言った論理的に考えるスキルを発揮した結果です。
相手に上手に伝えられるかは、事前の準備でほぼ決まっています。
自分の考えが上手く伝手られないのは、自分の考えが上手くまとまっていないからです。
ピラミッドストラクチャーはロジカルシンキングにおける重要な武器の一つ。
相手に自分の主張を分かりやすく伝えて納得してもらう上でとても強力なツール。
自分の考えを掘り下げて、要点をまとめて構造化することができます。
本記事では
・ピラミッドストラクチャーとは何か
・具体的にどのような効果があるのか
・どのように実践すれば良いか
これらついて考えていきます。
ちなみに、ピラミッドストラクチャーを理解するためには、
論理の最小構造である「演繹法と帰納法」(記事はこちら)
同じ抽象度で切り分け整理する「MECE」(記事はこちら)
この2つの考え方は必修科目と言えます。
この記事を読んでピラミッドストラクチャーを是非とも習得したい。と思っていただけた方は一度目を通してみて下さい。
ピラミッドストラクチャーとは
ピラミッドストラクチャーは「主張と根拠の関係性を図式的に捉える手法」です。
何かを提案したり、自分の主張を伝える時にとても有用です。
例えば、AさんがBさんにふるさと納税をオススメするとします。
本来自分の市に納める税金を、ある程度自分で選んだ自治体へ先に寄付することができるんだ。
その結果、寄付した分は翌年の税金から免除されるし、寄付先の自治体から返礼品がもらえるっていうお得な制度なんだよ。」
でもAさん、実際それってどれくらいお得なの?何かデメリットとかは無いのかい?」
現状資金に余裕がない人には難しいかもしれないことと、支払った全額のうち2000円だけは免除されないんだ。
逆に、2000円より価値のある返礼品をもらえたらお得なんだけど、返礼品の価格は寄付金に対しておよそ30%弱が相場らしくてね。年収によって免除される額が違うんだけど、僕らの年収だと4万円くらいまでは寄付できるはずだ。
つまり、2000円の負担で1万円くらいの返礼品が期待できそうなんだよ。
これ以外にも書類を準備したりしたりする若干の手間や、気をつけることはあるけど、やるかやらないかの判断には十分じゃないかい?」
実際にどんな返礼品があるのかも見てみたいし、もう少し詳しく話を聞きたいな。」
上記のAさんの主張をピラミッドストラクチャーを使って図式化してみます。
いかがでしょうか?
文章もそれなりに分かりやすく書いたつもりですが、図式化すると話の要点とその繋がりが明確になりますよね。
これがピラミッドストラクチャーです。主張と根拠の関係を図式化した論理構造がピラミッドのような形となります。
Aさんは(というかこれを書いた私は)話をする前に、頭の中でこのようなピラミッドストラクチャーを描いてから話をしています。
これによって納得感のある伝え方ができるようになるのです。
ピラミッドストラクチャーのメリット
ピラミッドストラクチャーは「主張と根拠の関係性を図式的に捉える手法」だとお伝えしました。
関係性を図式化すると具体的にどのようなメリットがあるのかを考えてみましょう。
私の考えるメリットはズバリこの3つです
・要点が明確になる
・主張が根拠で支えられていることを確認できる
・根拠に抜けや重複が無いかを確認できる(MECEになっているかを確認できる)
要点が明確になる
よく、「理由は3つあります」と前置きをして話をするのが効果的であるとも言われますが、
主張をダイレクトに支える理由が要点であり、これらを切り分けて考えることが、聞き手の理解を助けるからです。
ふるさと納税がオススメだよ!という話を伝える際に最も伝えたいポイントは何か?
今回のピラミッドで考えると、「実質の負担が2000円で1万円程度の価値のある返礼品がもらえること」です。
その他の、「返礼品の相場は寄付額の3割弱」とか「寄付した額は翌年の住民税から免除される」と言った話は全て、この最も伝えたいポイントを理解してもらうための根拠に過ぎません。
この要点を見失って、好きな自治体を応援できる。とか、ご当地の美味しい食材を楽しめるとか。そういったあまり関係のない根拠を持ち出すと、どこにも結びつかない情報が宙に浮いたままとなり、伝わりにくい話になってしまいます。
主張が根拠で支えられていることを確認できる
根拠で支えられているということは、「それは何故か?」という問いに答えられるということです。
「返礼品の期待価値は1万円程度」だということを伝えたくても、その理由も説明できなければ理解は得られません。
図式化することで、伝えたい要点に対して十分な根拠が揃っているかを明確に確認することができるようになるわけです。
注意点として、論理の最小構造「演繹法と帰納法」でもお伝えしたことですが、いかなる結論もたった一つの理由からは生み出されない。ということは念頭に置いておく必要があります。
最低2つの根拠は必要であるとあるのだと理解ください。
(ちなみに、支出と収入でみた時に、素直に取り出せる結論は「収入の方が高い」であり、「ふるさと納税はお得だ」という結論の前には「支出より収入の方が高いのであればお得である」という前提が省略してあります。前提の省略については冒頭の「演繹法と帰納法」についての記事を確認ください)
根拠に抜けや重複が無いかを確認できる(MECEになっているかを確認できる)
主張が根拠に支えられているかどうかがわかるというのは、ピラミッドで見た時の縦の関係を確認についてでしたが、
抜けや重複に関しては横の関係を確認についてになります。
「実質負担は2000円」と「返礼品の期待価値は1万円程度」という根拠は「支出/収入」という切り口でお得かどうかを考えています。
もし収入あるいは支出のどちらかが抜けていると、誤った結論や納得感の無い結論になってしまいますよね?
図式化すると同じ抽象レベルにいるものが何かがわかるため、部分ごとに「MECE」になっているかを確認することができるようになります。
ピラッミッドストラクチャーの実践方法
ここで再度、前提知識の確認です。
ピラミッドストラクチャーを理解するには、冒頭でもメリットでもお話しした「演繹法と帰納法」「MECE」を理解することが重要です。
ピラミッドストラクチャーの実践は「演繹法と帰納法」の実践方法で紹介した分解の要領で行います。
あなたの主張を明確にしよう
最初は、ただの相談や報告よりも提案について考える方がわかりやすいかと思います。
主張を提案にする方法は、文脈を「〜すべきだ(すべきではない)」という形にすることで簡単にできます。
ちなみに、話の要点よりも何を伝えたいかというのが一番大事なポイントだったりもするので、練習に置いては何でも構いませんが、実践の際には本当にこれが伝えたいことだろうか。と自問することをオススメします。
例 貯金が十分にあるなら民間保険には入るべきではない。
その主張はどのような理由があれば相手が納得するか考えよう
あなたが主張を決めた時、ある程度それについて説明できる理由があなたの中にあるのだと思います。
あなたがすでに持っている情報だけで説明できるかどうかは一旦さておき、客観的に考えて、その主張はどんな理由があれば納得できるかを考えてみて下さい。ここが主張の要点になります。
もしあなたの持っている情報だけでは足りないと判断した場合、そこから調べればいいですし、最悪そこは仮説であると伝えて、相手に判断を委ねても良いかもしれません。
MECEで考えることが大切です。どのような切り口で分けるかも大切ですし、漏れやダブりがないかも気を付けて考えましょう。
ただし、100%のMECEに拘る必要はありません。必要なのは論理の正しさではなく、納得感です。80%くらいを目指しましょう。
例 期待値で言うと損をする。 いざという時に必要かというと、ある程度貯金があれば不要。
理由を深掘りして、客観的事実に基づく根拠と結びつけよう
納得を得るための最大の武器は客観的事実です。
主張の要点である理由をさらに客観的事実で支えることで、とても納得感のあるピラミッドが完成します。
客観的事実とは誰が見ても同じに見える。ということですが、いわゆるデータなんかはわかりやすいですね。
あるいは主張を伝えたい相手との共通認識であればそれも客観的事実として考えてもOKです。
客観的事実を含めた客観的とは何か。についてまとめた記事もありますので、参考にしてみて下さい(こちら)
例 保険の還元率と実際のデータ 健康保険で考える実際の負担金額
最初は紙でも何でもいいからとにかく実践してみる
職場で上司や先輩に何かを提案する時でもいいですし、家族に対してでも構いません。
何か提案する機会を得たら、実際に書き出してみて下さい。最初から頭の中だけで考えるのは絶対にオススメしません。
そして、それは完璧なものでなくても構いません。MECEも20%くらい漏れてても大体は実用範囲ですし、全てが客観的事実で支えられていなくても構いません。
完璧な出来でなくとも、ピラミッドストラクチャーを作る前と後では説明のしやすさが段違いに違うことでしょう。
何故なら、あなたは何が話の要点で、それがどのような根拠に支えられているかを整理できているからです。
何度も実践して慣れてくると、自然と頭の中で要点を抽出して関係付けることができるようになるでしょう。
最後に
今回例題で出した「ふるさと納税」と「民間保険」についてはここでは全ては語れていないものの、基本的に事実に沿って書いております。
興味のある方は是非調べてみて下さい。
ふるさと納税は誰もがやった方が良い。というチートな制度だと言われておりますし、民間保険(医療保険、生命保険)は自分が不幸になることにかけた宝くじと呼ばれております。(ちなみに、宝くじ自体は「愚か者の税金」と呼ばれております)
私がこのブログでご紹介する「考えるについて」とは別に、世の中には知っているか知らないかだけで、損をするかどうかがガラリと変わることが山ほどあるようです。
みなさん、知識を愛しましょう。
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