人の話を理解するのが苦手。
新しいことを学ぶ時、上司や先輩から指導を受ける時、一生懸命理解しようとするものの、わからないことがある時。自分が理解するためにどんな質問をすればいいかもわからない。
あるいはもっと単純に「相手の主張を理解する力」を身に付けたい。
このような想いを持つ方は少なくはないのではないでしょうか?
前回このブログで、ピラミッドストラクチャーについてご紹介しました。
ピラミッドストラクチャーは「主張と根拠の関係性を図式的に捉える手法」であり、自分の主張を相手にわかりやすく伝えるために、あらかじめ自分の主張を整理整頓しておくための考え方です。
この考え方。実は相手の主張を理解する時にも、とても役に立ちます。
何故かというと、自分の考えをまとめる時と同じように「相手の主張と根拠の関係性を図式的に捉えることができる」からです。
本記事では、相手の主張をピラミッドストラクチャーで理解するとはどういうことか。そのメリットと方法について考えていきます。
ピラミッドストラクチャーについて、一応簡単におさらいも含みますが、より詳しく知りたい方は前回の記事も参考にして下さい。
ロジカルシンキング ピラミッドストラクチャーとは
ピラミッドストラクチャーで相手の主張を理解する
前回の記事で、「ふるさと納税はお得だよ」という主張を例に取り上げました。
あらかじめ下図のようなピラミッドストラクチャーを考えてから話すことで、要点と根拠がまとまった、わかりやすい説明ができる。という話でしたね。
ピラミッドストラクチャーとは、このように結論と、それを支える根拠の関係性を整理するための考え方です。
そして、話す側がこのピラミッドを持っているだけではなく、聞いている側も、聞きながらこのピラミッドストラクチャーを作りましょう。というのが今回のお話です。
コミュニケーションが成立する上で、「相手の主張を理解する」というのは、かなり初歩的で重要な部分になりますよね。
しかし、みなさん日頃から相手の話を理解したつもりになっていることも多いのではないでしょうか?
本当に理解した。という状況は、お互いが同じピラミットストラクチャーを思い描けた時である。と言っても過言ではありません。
「知っている / 理解している」や「知識 / 知恵」これらの違いは
「ただの情報」か「整理され、他の情報と関係付けされた情報」かという違いです。
そう、「整理し、関係付ける」この工程が理解のためには必要なのです。
伝え手と受け手が同じピラミッドストラクチャーを思い描けた時が、本当に理解できた時である。ということをお伝えしましたが、お察しの通りこれは理想論です。
あなたが受け手だとして、多くの場合、相手はピラミッドストラクチャーのことなんて考えていないでしょう。
きっと、あらゆる情報をパズルのピースのごとくあなたに渡してくるのです。
あなたはそれらの情報を要るものと要らないものに分けて、関係付けるかのごとくはめ合わせていく必要があるのです。
ただパズルのピースををもらって「なるほどね〜(小並感)」という感想を持っている時は知っただけで、理解できていない時かもしれませんね。
ピラミッドストラクチャーで受け取るメリット
考えを整理し、まとめる。という意味では、自分が話す時に考えるピラミッドストラクチャーと同じメリットが得られます。
・要点が明確になる
・主張が根拠で支えられていることを確認できる
・根拠に抜けや重複が無いかを確認できる(MECEになっているかを確認できる)
これらを確認できることによって、
伝える側の場合、不足している情報を事前に補強しておくとか、余分な情報があったら省いておくとか。そういったアクションに繋がります。
しかし、情報を受け取る側で見た時に少し違う意味を持ちます。
上記のメリットを言い換えるとこのようになります。
・自分が納得するために、何を質問すれば良いのかがわかる
・情報の整理、関係付けにより、実践的な理解を得られる
・その話に信憑性があるのかを判断できる
自分が理解するために、何を質問すれば良いのかがわかる
ピラミッドストラクチャーの紹介記事でも使用した、ふるさと納税の会話を例に取り上げます。
そもそも皆さん、ふるさと納税はお得だよ。といったような話を聞いた時、いかがでしょう?
「確かにお得な制度だ!利用してみよう!」ってなりますか?
「お得な制度に聞こえるけどちょっと怖いな。みんながやってるならやってみようかな」みたいに感じる方も多いのではないでしょうか?
単純に疑り深い。という方を除けば、制度を理解し切れていないから。でも何が理解できていないのか自分でもわからない。そんな方が多いのではないでしょうか?
自分が何を理解していないのかがわかる。何を知れば理解できるのかがわかる。そんな能力があれば、自分で自信を持って判断することの助けとなるでしょう。
AさんがBさんにふるさと納税をオススメするとします。
本来自分の市に納める税金を、ある程度自分で選んだ自治体へ先に寄付することができるんだ。
その結果、寄付した分は翌年の税金から免除されるし、寄付先の自治体から返礼品がもらえるっていうお得な制度なんだよ。」
さて、これだけを聞いてわかるピラミッドを作ってみましょう。
「ふるさと納税はお得だ」という主張を認めるには、2つの要点「支出」「収入」を比べた時に収入の方が多く、他にデメリットがなければ、納得できそうですね。
お得かどうかの要点を「支出と収入」という枠で考えることで、それぞれがどれくらいなのかを把握することが重要だと気付くことができます。
でもAさん、実際それってどれくらいお得なの?何かデメリットとかは無いのかい?」
現状資金に余裕がない人には難ししかもしれないことと、支払った全額のうち2000円だけは免除されないんだ。
逆に、2000円より価値のある返礼品をもらえたらお得なんだけど、返礼品の価格は寄付金に対しておよそ30%弱が相場らしくてね。年収によって免除される額が違うんだけど、僕らの年収だと4万円くらいまでは寄付できるはずだ。
つまり、2000円の負担で1万円くらいの返礼品が期待できそうなんだよ。
これ以外にも書類を準備したりしたりする若干の手間や、気をつけることはあるけど、やるかやらないかの判断には十分じゃないかい?」
この内容を聞くことで、ここまでのピラミッドストラクチャーが作れます。
数字だけを見れば手間をコストだと考えても、8000円の差額なら気にしなくても良さそうだと判断できそうです。
最下層の根拠も、具体的なので事実に沿って話してそうです。
もし疑うのであれば、本当に4万円も寄付できるのか?返礼品の相場は寄付額の3割弱というのは正しいデータか?あたりは疑問に思ってもいいかも知れませんね。
気になるところと言えば、1万円の価値があるとは言え、Bさんにとっての価値のあるものでなければなりません。
Bさんが好きに選べるものなのか、返礼品の内容は明らかになっているのか、こういったことは気になるところですね。
実際にどんな返礼品があるのかも見てみたいし、もう少し詳しく話を聞きたいな。」
このように、分解した項目それぞれに疑問を抱く部分はないか?それぞれに納得できるかを精査することで、自分が何を理解できていないかを知ることができます。
話の内容全体をぼんやりと見るから、どこが理解できていないかに気付きにくいのです。
情報の整理、関係付けにより、実践的な理解を得られる
実践的な理解とは何か。ざっくり言うと、「何故そう言えるのかがわかっている」「他者に説明できる」程の理解であると言えるのですが、「表面的な理解」「知っているだけ」の状態とは明らかに違った働きをします。
それは、変化に対応できることです。
ふるさと納税の例で言うと、将来国の法律等が変化することは十分に考えられます。
その結果、非免除額2000円が5000円に増額し、返礼金の相場が1割程度になったとしましょう。
あなたは上記のピラミッドストラクチャーにより、支出と収入の関係付けができていますから、これらの数値の変化が計算にどのような影響を及ぼすかを理解しています。その結果、4万円の寄付ではむしろ損をすることに気付くことができるでしょう。
年収は変化するでしょうから、控除される寄付金の算出方法も理解していれば、ふるさと納税がお得であるかを、変化する環境の中でも判断することができるのです。
もしあなたが、ふるさと納税で私は8000円くらいは得をするらしい。というピラミッドストラクチャーでいう2段目の浅い理解のままだと、変化に対応できないでしょう。
その話に信憑性があるのかを判断できる
これは、根拠が十分であるか、客観的事実に基づいているか。MECEに考えられており、考えに抜けが無いか。の2つの視点から、その主張が論理的かどうかを判断することができるからです。
もしAさんとBさんの会話が下記のような状態ならどうでしょう。
「へー、そうなんだ!人によって金額が変わるの?」
「いや、それはわかんないけど、他の人はそれくらいの価値のあるものをもらってたって聞いたよ」
1万円程度の実績はあるようですが、何故1万円程度の返礼品が見込めるのかの理由がわかりませんよね。
要点に対して根拠が十分であるかどうか、考えに抜けがないかどうかは、分解した要素一つ一つに対しての疑問を解消し切れなかった時にわかります。
ちょっと変わった例も見てみましょう。
最近、野球を現場に見に来る若者の比率が少なくなってきている。若者の野球離れが進んでいるようだ。何か手を打たなくては。
このような論を出されて何か疑問に思うことはできるでしょうか?
若者の人口推移が実際にデータとしてあった場合として、試しにピラミッドストラクチャーを描いてみましょう。
このような感じでしょうか。
前回のピラミッドストラクチャーの記事を読んだ方は思い出して欲しいのですが、いかなる結論もたった一つの理由からは生み出されない。これは鉄則です。
今回隠れた前提があるとすると「野球に関心のある者は野球を現場に見に来るはずだ」といったような内容になります。
これは果たして本当にそうでしょうか?
「野球に関心のある人」を「どのようにして関心を満たすか」でMECEに分解して考えると。実際に「野球を現場へ見に行く人 / テレビやネットで見る人」と分けられそうですよね。
つまり正しいピラミッドスロラクチャーはこうです。
いかがでしょうか?
要点、根拠をMECEに考えた時、抜け漏れがある場合は信憑性がガクッと下がります。
今回はわかりやすく要点が1つだけの例を出しましたが、これには気付けないまま疑問を全て解消したような気分になることがあるので注意が必要です。
MECEの記事はこちら
(若者と野球に関係に関しては完全に作り話です)
ピラミッドストラクチャーで理解する実践方法
ピラミッドストラクチャーを実際の会話の中で組み立てて、その場で質問をしようと思ったら、瞬時に論理が組み立てれる程に、ピラミッドストラクチャーを使いこなせていないといけません。
これは自分の主張を事前にまとめる時よりも断然難しいでしょう。
しかし、相手が文章の場合、練習としてはとても効果的です。
教材となるものならなんでも良いです。本、ネットのブログ、教育系ユーチューバー。これらはあらゆる主張が飛び交っています。
「〇〇は体に良い!」「毎日〇〇をしろ!」こういった主張から何故そう言えるのか要点と根拠を取り出してピラミッドストラクチャーを作成してみてください。
こういった教材は大抵の場合、要点がまとまっており、根拠も説明されてあるはずです。
むしろ、自分の主張をピラミッドストラクチャーで考えるよりも簡単で最初の練習にはふさわしいかもしれません。
ただ、わざわざピラミッドストラクチャーを勉強するために、興味のないことを調べて実践する人もあまりいないでしょうから、あなたが次回ネットで検索して調べたことをピラミッドストラクチャーで考えてみることをオススメします。
もし、ピラミッドストラクチャーを自力で作れるぞ。自分の主張もまとめることができるぞ。
という段階になったら、実際の会話でチャレンジしてみましょう。
おそらくそれでも最初は難しいでしょう。そんな時は「一度じっくり考えるために持ち帰らせてください。後日また質問させてもらってもいいですか?」と伺い立てても全然OKでしょう。
持ち帰った後に紙に書き起こしてみれば、だいぶ理解が進むはずです。
過去記事でもお伝えしていることですが、ロジカルシンキングにおけるスキルは、実践しないと全く身に付きません。
できることからで構いません。是非とも実践をしてみましょう。
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