論理的思考、ロジカルシンキング、そんな言葉を聞くと
・頭のいい人だけが使えるスキルでしょ?
・興味あるけど、私には難しそう。
こんな人いっぱいいますよね?
私の身近でも
「本とか買って読んでみたけどよくわからなかった。」
なんて人も結構います。
このロジカルシンキング、奥が深い上に正解のない考え方なので、
実践しようと思ってもなかなか思うようにはいかないんですよね。
本記事はそのような悩みを抱える方へ
「ロジカルシンキング入門編」と題して、豊富な具体例で「論理の最小構造」を理解していただきます。
「理論の最小構造」って難しい言葉に聞こえますが、最も小さく簡単な論理の構造のことです。
論理的であるというのは、この1論理。とも言える簡単で小さな論理が組み合わさった状態なので、まずはここを理解しましょうということです。
ズバリ、あなたがロジカルシンキングを習得するために、幾冊もの本を読み漁っても、
「論理の最小構造」と「MECE」の概念をしっかり理解しなければ、全く実践できません。
そして、このロジカルシンキングは厄介なことに実践を積み重ねないと一向に前に進めないのです。
ちなみに、ロジカルシンキングにおける2大ツール。
・ピラミッドストラクチャー
・ロジックツリー
実はこれらは「論理の最小構造」と「MECE」という考え方さえ理解できれば、その応用をしているに過ぎません。
この2つだけでも頑張って理解すれば、ロジカルシンキングを実践する準備はバッチリなのです。
是非とも一緒に頑張りましょう。
論理の最小構造を理解しよう
まず論理の構造を以下のように定義します。この考え方がとっても重要です。
適切な形で結論が根拠に支えられていること。
適切な形、いわゆる型が「演繹法(えんえきほう)」「帰納法(きのうほう)」と呼ばれるものです。
難しいワードが出てきましたね。大丈夫です。この名前自体は覚えなくても問題ありません。
こちらが演繹法です。
一般的な前提を元に、より具体的な結論を導き出します。
こちらが帰納法です。
複数の根拠から、抽象的な結論を導き出します。
これらの詳しい内容の説明は一旦後回しにして、これらの図で示した三角の関係。
これこそが適切な形で結論が根拠に支えられている状態と言えるのです。
そして、この三角形の1つ1つが「理論の最小構造」なのです!
(演繹法は無理矢理三角にしてますが、三角で覚えましょう。ピラミッドストラクチャーを覚える時に役立ちます)
…もしかしたら、だから何?と思われてる方がいるかもしれませんが、
論理的であることがなんたるかの核となる部分がこの関係から読み取れるのです。
それは、どれだけ最小構造の簡単な結論、主張であっても、たった一つの根拠だけでは絶対に生み出されない。と言うことです。
陥りやすい演繹法で例を挙げますと
「テレビが壊れた。新しいテレビを買おう」
「今日は蒸し暑い。だからエアコンをつけよう」
ちゃんと結論と根拠がセットになってますね?しかし、厳密に言えばこれでは論理的とは言えないのです。
前提となっている部分が、その人の「当たり前」に隠されているのです。
「テレビが壊れた。壊れたものは買い換えるべきだ。だから新しいテレビを買おう」
「今日は蒸し暑い。暑い時はエアコンをつけるべきだ。だからエアコンをつけよう」
これが論理の正しい姿です。
大事なことなのでもう一度言います。
いかなる結論、主張であっても、たった一つの根拠だけでは絶対に生み出されません。
何故こんなことを言うかといと、ロジカルシンキングは
客観的なデータや事実という根拠から、妥当性があり納得感のある結論を導くことのできるスキルです。
データや事実はそれ自体が嘘をつくことはありません。妥当性や納得性が失われるのはいつだって考える人の判断、主観の部分です。
だからこそ、目の前の事象に対して、どの前提を当てはめるのか、そこからどのような結論を出すのか。
たくさんのデータからどのような共通項を導き出すのか。
これらに細心の注意を払わなければならないのです。
それなのにも関わらず、当たり前というバイアスを持ち出すと、何も考えることなくオートマチックに結論がでてきてしまいます。
これほど危険なことはありません。
さあ、ここまで言えば前提。というものが論理にとっていかに大切な存在であるかは察していただくことができるでしょう。
ロジカルシンキングを学んでみた。演繹法も帰納法も知ってる。でも実践ではうまくいかない!
こんな人は、あなたにとっての当たり前が、論理の三角形を作れない一番の原因かもしれません。
演繹法と帰納法
どれだけ小さく簡単な理論であっても、「1つの根拠+前提」あるいは「複数の根拠」が必要なことはわかっていただけたかと思います。
ここからは実際に演繹法と帰納法の詳しい解説をしていきます。
この演繹法と帰納法は倫理的推論の方法と言われております。
まさしく客観的なデータや事実という根拠から、妥当性があり納得感のある結論を導くことのできるスキルそのものです。
(ただし、これはロジカルシンキングのもつ特徴の1つでしかありません)
この論理的推論を正しく扱うことができれば、そこから導かれる答えはかなり真実に近しいものであり、およそみんなが納得できるものになります。
こういうことが、できるようになりたいですよね!
ここまでで演繹法と帰納法がどんなものなのかはざっくりわかってもらえてるはずなので、それぞれの特徴と、実戦するための注意点を重点に解説していきます。
演繹法
演繹法の最大の特徴は、前提が正しいと認めた場合、根拠から導かれる結論も絶対的に正しい。と言えるところです。
つまり
「人はいつか死ぬ」という前提を認めるのであれば、「あなたは人である」と「あなたは死ぬ」という関係は絶対に正しいということです。
では、演繹法で間違った結論を出してしまうのはどういった場合か。
それは以下の3パターンです
- 前提がそもそも間違ってる場合
- 根拠が間違ってる場合
- 勝手に別の前提が加わっている場合
「テレビが壊れた。壊れたものは買い換えるべきだ。だから新しいテレビを買おう」
・本当に、壊れたものは買い換えるべきだろうか?修理することもできるのではないか?
・本当に、テレビは壊れたのだろうか?コンセントが抜けているだけではないか?
・「新しいテレビ」というのは「買い換えるなら新品を買うべきだ」という前提が加わっている
帰納法
帰納法の最大の特徴は、結論に対する根拠の数が増えるほど、それが確かなものとなる。と言えるところです。
つまり、
「日本先祖は全員亡くなってる」
「アメリカの先祖は全員亡くなってる」
「中国の先祖は全員亡くなってる」
「ドイツの…」「イギリスの…」「アフリカの…」と根拠を増やしていくことで、
「人はいつか死ぬ」と言う結論をより確かなものにできると言うことです。
逆に、どれだけ確かな根拠を集めても、絶対に正しい推論というのは生み出せないのです。
帰納法で間違った結論を出してしまうのは
- 根拠の数が十分でない場合
- 根拠が間違ってる場合
- 共通項でないものを結論と取り出している場合
「ラーメン屋Aは行列だ」「ラーメン屋Bは行列だ」「ラーメン屋Cは行列だ」
・ラーメン屋DやEはどうだろうか?
・その行列は本当にラーメン屋に並んでいるのだろうか?
・共通項はラーメン屋が行列であることなので、正しい結論は「どこのラーメン屋も行列だ」
(「どこのラーメン屋も行列なら、ラーメンのブームが到来している」と言う前提が加わって別の結論になっている)
まとめ
演繹法にしても帰納法にしても、結論を導き出す時に必ず別の前提がくっついてくる場合があります。
これが注意すべき当たり前になります。
あなたが一生懸命この型に当てはめて根拠も前提も間違ってないな!と指差し確認をしたところで、しれっと確認できていない前提が紛れ込んでいるのです。
これら全てを洗い出す必要は必ずしもありませんが(というか全ては無理です)、論理を積み上げていく中で、これらが多ければ多いほど不確実な結論にたどり着いてしまうことを念頭に置いておいてください。
本当に大事なことは妥当性と納得感
さて、正しい論理構造とはどう言うものかを説明しました。
それは論理構造、三角形の関係こそがロジカルシンキングの核となる部分で、ここをしっかり理解しないままにこの先の応用はできないからです。
しかし皆さん、上記の例題で思いませんでした?
友達から「今どこのラーメン屋も行列ができてるよ!これはラーメンブームが来てるな!」と言われて
「いやいや、その主張はどこのラーメン屋も行列なら、ラーメンブームが来ているっていう前提をすっ飛ばしてるよ。論理が飛躍してるね」
なんて言おうものなら、この友達は二度とあなたに話しかけてくれないかもしれませんね。
論理を扱う上で、論理構造の正しさは相手にとってそれほど重要ではないということを理解しましょう。
相手が既に同じ前提を共有している場合、その論理は省略してもよいのです。
あなたが夫婦で暮らしているとしましょう
テレビがつかなくなった。思いつく限りのことを確認してみたが、どうやら壊れてしまったらしい。
この時、付き合いの長い夫婦であれば、
・お互いに新しいものが好き。
・誰が使ったかもわからない中古は嫌だ。
・古くなってきたものは修理は面倒だからやりたくない。
このような価値観のすり合わせから「家電が壊れたら新しいものと買い替えるべきだ」という共通認識ができているかもしれません。
こう言った場合「テレビが壊れたから、新しいテレビを買いに行こう」と言ってもバッチリ通じるわけですよね。
人がいつか死ぬことを疑う人はそうはいないでしょう。
雨が降るなら傘が必要なことは、多くの人にとっては間違いではないでしょう。
何か結論を出す時、考える時、当たり前という概念は危険だと言いました。
しかし、それを伝える時には、同じ当たり前を持つ相手に限っては、全て省略してしまっても問題ないです。
むしろ省略すべきとも言えます。
論理をコミュニケーションに使うのであれば、大切なことはあなたの論理の正しさを知ってもらうことではなく、あなたの主張に納得してもらうことなのだということを忘れてはいけません。
実践の仕方
いかがでしょう?
論理とはどういうものか、どう向き合って、どう扱えばいいのか。なんとなくわかっていただけたことでしょう。
ただし、冒頭でも説明したように、ロジカルシンキングとは、実践しないと絶対に身に付かないのです。
例題を見てわかった気になっていてはいけません。あなたが例題を作れなければ意味がありません。
そのための実践方法をお伝えします。
始めのうちは、根拠から結論を作り出すのではなく、結論から根拠を取り出すことを意識してみましょう。
要するに、分解です。
あなたは常日頃、意識的にしろ、無意識的にしろ、意思決定を繰り返しています。
電車に乗る。何かを買う。電話をする。扇風機をつける。
なんでもいいです。思いついた時に、それを論理構造に分解してみてください。
具体的には
ステップ1として
分解する対象を「○○すべきだ」と考えて、それの理由を「○○だから」と言った感じで、できるだけシンプルに回答します。
そうしたら、この間に隠された「○○ならば○○である」という前提を考えてみてください。
これがパッとできるようになれば、だいぶ論理の考え方が染みついています。
ステップ2として
難しいですが、今度はステップ1で出てきた理由と前提をさらに分解してみましょう。
演繹法で分解するのが難しい場合は帰納法を使ってみましょう。
帰納法の使い方がよくわからなければ、最初はとにかく結論を肯定する情報を思いつくままに挙げてみてください。
具体例を出します。
あなたが車で薬局に行こうとしたとします。
あなたはきっと「薬局に行くには車を使うべきだ」と、無意識で判断していたのでしょう。
その理由は「車は便利だから」隠れた前提は「便利ならば使うべきである」と言った感じでしょうか。
「車は便利である」の理由は帰納法を使って
・「座っていられるから疲れない(だから車は便利である)」
・「早く目的地に到着できる(だから車は便利である)」
・「ナビがあるから迷わない(だから車は便利である)」
「便利なものは使うべきである」
理由は「便利なものは自由な時間を生むから」
隠れた前提は「自由な時間を生むものは使うべきである」
このような感じです。もちろんこれらに正解というものはありません。
もっと分解して掘り下げることもできますが、これ以上は「MECE」の考え方を学んでからの方が効率がよいので、2層くらいまで思考を掘り下げてみることを実践してみてください。
ちなみに、今の例題では、当たり前による前提の省略がありました。気付いた方もいるのではないでしょうか?
この部分ですね。
・「座っていられるから疲れない(だから車は便利である)」
・「早く目的地に到着できる(だから車は便利である)」
・「ナビがあるから迷わない(だから車は便利である)」
これらは全て、「○○ならば、便利である」という前提が省略されています。「疲れないならば、便利である」といった感じで。
帰納法を使うときはデータや事実だけではなく、演繹法と組み合わせることで主観的な判断情報も根拠として使えることができます。
ここまでできれば、論理的に物事を考えるための骨の部分はバッチリ理解できたと言えます。
ここに「MECE」という情報を整理整頓するスキルを合わせることで、論理的に考える力は完成すると言っても差し支えありません。
最後に、ステップ1の「〇〇すべきだ」という考えるテーマを思いつかない方への宿題です。
該当するケースを想像して考えてみてください。
・あなたは温かい飲み物を買いました。何故ですか?
・あなたは実家へ帰るために新幹線を使うことにしました。何故ですか?
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